日本語教師事情(私の場合)
10年くらい前、神田神保町の三省堂で立ち読みをしている時に「日本語教師養成」の雑誌が目にとまりました。「ふーん、日本語教師という職業があるんだ」と感じただけで、その雑誌を深く読むことはなく、そのまま目的の文庫本売り場に移動してしまいました。
それから月日が経ち、定年を迎えた私は「さて、毎日が日曜日状況をどう過ごすか」と思い悩みながらも何度かハローワークに通い、少しでも生活の足しになるような(でもハードワークではない)再就職口を探し始めました。もともと教育業界に興味があったので、大学の事務職の募集案件などをハローワークの検索機で見つけ、説明員の方に相談すると、応募要項には性別・年齢不問とあるものの(採用しないわけではないが)実際には、それなりの年齢の女性の職場だということでした(そりゃそうですね)。
帰宅してからもパソコンでいろいろと検索しているうちに「日本語教師養成講座」の文字が目に入り、あの時の本屋での立ち読みの情景が浮かんできたのです。
日本語教師になりたいなどと思ったことはありませんでしたが「日本語を外国人にどうやって教えるのだろう」という興味から、とにかく説明だけでも聞いてみようと、すぐに説明会の参加を申し込みました。説明会はパンフレットをなぞるだけのものでしたが、受講料が失業保険の額とほぼ同じであることを知り、その場で口座の申し込み契約にサインしてしまいました。
講座は私と同じような年齢の男性/女性、ずっと若い女性、子育てが終わりそうな年齢の女性、私より一回りくらい上の男性/女性に加えて、20代の男性/女性も混じった40人くらいのクラスで意外と盛況でした。
聞いてみると、「海外に行って日本語教師をしたい」「海外に移住したいので、その時の小遣い稼ぎで日本語教師をする」というかっこいい理由の人もいれば「ボランティアとして近所の外国人に日本語を教えたい」という素晴らしい人もいました。ただ、やはり、一番多いのは「日本の日本語学校で働きたい」という人で、私のような「単に興味があるから」という人も2-3人いました。
半年の講座も無事に終えて認定証を手にし、養成学校の就職口紹介の掲示板で「大学院大学での留学生の論文指導者募集」の案件を見た私は「日本語教師になりたい」などとは思っていなかったにもかかわらず、すぐに応募し、そこから日本語教師の険しく短い道が始まったのです。
日本の日本語学校に非常勤講師として勤務しても、ほとんどが安価な時給制で、だいたい2000円/1時間くらいからが多く、経験を積んでいくと少しずつ賃上げされていくというシステムのところがほとんどです。2000円/1時間が安価かどうかという議論はありますが、実は、授業を組み立てる準備にとても時間がかかり、それは時給の対象にならないという日本語学校がほとんどです。ここのところは、一般の小中高校で「残業が多い」という事情と似ている部分があるかもしれません。この準備時間を含めて計算すると、準備に時間をかける私などは800円/時間くらいに下がってしまいます。
あるまかんポイント
・日本語教師になるには3つの方法があります。ひとつは私のように「文化庁の認定講座で420時間の講座を受講して卒業する」ことですが、それ以外に「日本語教育に関する大学を卒業し学位を持っている」でも大丈夫ですし「日本語教育能力試験に合格する」でも構いません。
・2020年から始まったコロナ禍のために海外からの留学生が激減し、日本語学校ビジネスも厳しい状況にあり、弱体の日本語学校は生き残りが厳しい状況です。この状況のため、日本語教師の採用状況にも変化があると思われますので、興味のある方は調べてみたほうがいいと思います。
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