海外からの留学生を日本の大学に入学させる話 【キラーワードを見つける】

大学入試のための志望理由書作成にしても、面接練習にしても、絶対に必要なものが「キラーワード」です。とくに試験当日の科目試験や小論文よりも面接を重視する大学(つまり、学力重視ではない大学)については必須と言ってもいいくらいです。

何故かというと「目立たないといけない」からです。日本文化が好きだから、アニメやマンガが好きだから、お金持ちになりたいからというような大学の勉強にまったく関係の無い志望理由を書く学生の中で、キラッと光らないといけないからです。しかし、残念ながら学生本人に「キラーワード探し」を期待しても、なかなか探し出すことはできません。

具体的には学生に次のことを指示します。
a. 志望大学のホームページ(アドミッションポリシー、ビジョン/ミッション、留学生サポート体制、就職サポート体制などの大学側の訴求点)をしっかり読み込ませる。
b. 志望大学のカリキュラムとシラバスを見て、自分の興味のある授業やゼミを見つけさせる。
c. 自分の勉強したいことや大学生活に期待することを再確認させる。
d. (教師と学生の共同作業)a-c、b-cを言葉で関連付ける(因果関係を組み立てる)。ただし、直接に関連させるのではなく、婉曲に関連付ける。これが最も難しい(留学生にとっても、日本人学生でも)ので、教師は「なぜ、そう思うのか?」など5W1Hベースのオープン系の質問を繰り返しながら関連付けを深めていく。
e. dの共同作業の中で「キラーワード」そのものが見つかることも、「キラーワードの種」が見つかることもある。

こんな例があります。

中国人学生のチョウ君(経営学部志望男性、仮名)は「日本に来る中国人観光客のためのネットビジネスを立ち上げるための勉強をしたい」という志望理由書を書いて持ってきました。一見すると、まともな志望理由に見えるのですが「ネットビジネスって何?」と聞くと「インターネットでの観光地紹介」と答えますし「そのためには何の勉強をすべきだと思う」と聞くと「わからない」と言います。結局は日本観光についての中国語のブログを立ち上げたいだけの話なのです。これでは経営学部志望としての志望理由書は成立しません。上記のa、b、cと何回もの面談でdを行い、たどり着いたキラーワードは「(日本人ではなく)中国人の目線で日本観光と日本の地域経済発展を結び付けたい」というもので、それを核としてその大学でどの授業やゼミが役に立つのかという論理展開にすることになりました。(「外国人留学生は日本になじむべき」の逆を行ったことになります)

別の例です。

ベトナム人学生のアインさん(経営学部志望女性、仮名)は「大学卒業後はベトナムに戻り、家業のコーヒー園を会社組織にしたい」という夢を志望理由に書いてきました。前述のチョウ君とは違い現実的な夢です。詳しい話を聞いてみると「実家やその周辺ではコーヒー豆の品質にばらつきがあり、出荷するときに買いたたかれて儲けが出ない」ことが問題だそうです。問題意識は具体的でとてもいいのですが、それと大学での勉強がリンクしていません。上記bを重点的に研究させ、たどり着いたキラーワードは「家業を会社組織にするために、大学の4年間で経営の机上シミュレーションを行う」で、志望理由書には「何をシミュレーションするのか」というポイントと授業をリンクさせるように指示しました。

全ての学生についてdのプロセスには時間がかかりますし、複雑な内容になったり、そもそもの志望理由を変更する事態も発生します。しかし、「なぜ、なにを、どのように」という質問をまじえてコミュニケーションしていくことで、「自分が気付いていなかったことを先生が気付かせてくれた」という信頼関係ができあがるという副次効果も期待できるのです。

あるまかんポイント
・11月7日の記事同様、日本人受験生にもキラーワード探しはあてはまると思います。
・(注意)ふたつの例を書いていますが、キラーワードにたどり着くまでのプロセスは大幅に省略して書いています。
・最後の1文に書いた「副次効果」は自信をもって断言できます。


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Udemyを始めました。タイトルは「WBSを使い倒せ !!」

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