「東京オリンピック2020」と「プロジェクト・マネジメント」
「プロジェクト・マネジメント(プロジェクト管理)」という概念があります。私の会社員時代の職種ではとても重要な概念で、私はそのための資格「プロジェクト・マネジメント プロフェッショナル」も保有していました。
話は変わりますが、今日の朝刊に「東京五輪経費1.7兆円 組織委公表より国費2800億円増」という記事がありました。ちなみに、この金額は招致段階の想定の約2倍になります。また、この金額は直接の関連経費だけなので、道路整備やコロナ対策などの間接的な経費を含めると3兆6800億円になるそうです。
この新聞記事を読みながら、しばし離れていたプロジェクトマネジメントの感覚がよみがえってきました。
プロジェクト・マネジメントにはいろいろな流派(考え方、アプローチ方法という意味です)がありますが、私が学んだのは米国PMI(Project Management Institute)という組織の考え方で、(とても)簡単に言うと、プロジェクト・マネジメントとは「そのプロジェクトのスコープ(そのプロジェクトで達成すべき成果)、期限、資源(予算、人、場所、設備等)、品質を守ってプロジェクトを成功させること」となります。
東京オリンピック2020をプロジェクト・マネジメントの概念にあてはめて評価してみると次のようになります。
・スコープ管理:「復興五輪」というスコープだったにもかかわらず、震災からの復興には無関係なものになってしまったので、評価は×。プロジェクトには「あれっ、最初に決めたことと違うことをやってないか・・・?」という状況がよく発生します。
・期限管理:コロナの影響があったにもかかわらず、期限を守って実施することができたので評価は〇。すばらしい。
・資源管理:当初の概算予算の2倍、間接経費を含めると4倍になってしまったので、評価は×××。企業経営の場合はあり得ませんし、もしも、予算超過が認められる場合はステークホルダー(利害関係者)の承認を得て進めるべきです。
品質管理:参加者や見ている人に感動を与えてくれました(感動を与えてくれたのは選手ですが・・・)。評価は〇です。(宿舎の食事など、その他の品質ポイントも〇のはず)
プロジェクトの評価方法もいろいろな考え方がありますが、私は「ひとつでも×なら、プロジェクトの全体評価は×」だと思います。
誰も言いませんが、プロジェクトマネジャー経験者は全員が間違いなく「プロジェクト・マネジメントとして東京オリンピック2020は失敗」と言うでしょう。そして、企業ではプロジェクトマネジャーは更迭され、報酬も受けられないことになります。でも、幸運なことに、このプロジェクトにはプロジェクトマネジャーとしてだれも責任を取らなくていいそうです。
・私がプロジェクトマネジャーをやった10億円のプロジェクトが最終的に11億円になってしまいました。きっちりと承認プロセスを通して承認されたうえで予算の増額をしたのですが、解雇されなかったもののボーナス査定は低く抑えられました。
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