たこ焼きとステレオタイプの話
面倒くさいので、「当たり前でしょ。大阪人としては、当然!」と応えていたが、大阪に戻って8年がたった今、ついに、真実を話す時が来た。
ただ、ここで、私の筆がぴたりと止まる。この先の文章の主旨を、「ステレオタイプで人を判断してはいけない」にするか、「大阪の家庭におけるたこ焼きの文化とは」にするかで、悩んでしまうのである。
ただ、だが、しかし、主旨を「ステレオタイプで人を判断してはいけない」にすると、話が非常に広がってしまい、このエッセイの読者層にはそぐわない深遠なテーマになってしまう。そこで、不本意ではあるが、今回は、「大阪の家庭におけるたこ焼きの文化とは」にする。あくまで、不本意なので、「ステレオタイプで人を判断してはいけない」は、別の機会とする。
さて・・・。
我が家には「たこ焼き用鉄板」は無い(あったかもしれないが、30年以上、見かけたことが無い)。もちろん、「電気/ガスたこ焼き器」も無い。当然、友人を自宅に招待して「たこ焼きパーティー」などというものをやったこともない。加えて、友人宅の「たこ焼きパーティー」に招待されたこともない。
確かに、子供の頃、実家には「たこ焼き用鉄板」があった。3x6か、4 x 6だったと思う。鉄板だけではない、テーブルの中央にそれを設置するためのガスコンロが仕組まれていた。普段は、そこに、テーブルと同じ素材の蓋がしてあり、いざという時に、その蓋をはずして、鉄板を置くのである。ただし、実際にそれを使ったのは数度だけである。
では、何故、実家のたこ焼き用鉄板を活用しなかったのか。何故、今、自宅にたこ焼き用鉄板がないのか。その理由を、これから、箇条書きで列挙するので、私に「当然持ってるよね」と言って、大阪人の主食をたこ焼きだと思っているステレオタイピング人は心して読まねばならない。
1.自宅でのたこ焼きは、たいてい、日曜日の昼に行う(週休2日が一般的でない時代)。母はタコと紅ショウガを切り、メリケン粉(小麦粉とは言わなかった)をとき、醬油、天かす、油ひき(取っ手の先に、モフモフと太い糸の束がついている奴)を用意し、鉄板を置く準備をした。男3人(父、兄、私)は何もせずに、ただ待っているだけである。たこ焼きを焼くのは、男3人の担当だが、ここで、問題が発生する、3x6(または、4x6)の両端に、うまく火が届かず、「3x4(または4x4)しか機能しない。両端はタコ焼きの形にならず、男3人はいらいらし始める。
2.3x4=12(または、4x4=16)の数式が何を意味するか。12÷4=3(または16÷4=4)である。この数式での除数4は、家族の数を表す。つまり、約10分を要するワンクールの「焼き」で、ひとりあたり、3個か4個のたこ焼きしか回ってこないのである。父がその間にビールを飲んでいたかどうかは記憶にないが、小学生二人が、そのサイクルに我慢できるわけがない。
3.仕方がないので、両端で、タコのしょうゆ焼きを始めることになる。
このようにして、楽しいはずの家族そろっての日曜日の昼食が、ストレスだらけの修羅場になってしまうのであり、優雅に、「たこ焼きランチ」は、早々にお開きとなってしまうのである。
結論として、「育ち盛りの子供のいる大阪の家庭では、日曜日に、家族そろってたこ焼きを焼く文化は醸成されない」ということになる。
ちなみに、現在、我が家の冷蔵庫の冷凍室には、常に、冷凍たこ焼きが入っている。酒の肴が足りない時には大活躍である。
是非、冷凍たこ焼きを、タコ焼き用鉄板で熱して、ストレスのないたこ焼き生活を送っていただきたいものである。(by 冷凍たこ焼きメーカー)
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